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Arovane11年振りの来日公演によせて ―永遠の長さを知るサウンドデザイナー (PART2)

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―永遠の長さを知るサウンドデザイナー(PART1)はこちらから

そして、周知の通り、9年振りとなるフル・レングス『Ve Palor』が2013年にリリースされた。レーベルは〈n5MD〉―アメリカのエレクトロニカ、IDMを主体にしたレーベルで、ProemやFunckarmaなどが所属し、独自の活動を進めており、彼はオーナーのMike Cadooの音楽への考え、姿勢を称賛している。

特筆しておくと、新作であるが、『Ve Palor』は2002年から2013年まで幅広いトラックが収められている。しかし、実際はあるレーベルのために、作業は00年から始めていたという。そのレーベルが当時、クローズしてしまったのもあり、ストックしたままになり、前述の〈n5MD〉のマイクと相談の上、過去のトラックから新しいトラックまでを新たに結い直し、リリースされるようになったという背景を今回、教えてくれた。

革新的なサウンドが展開されていた訳でもないが、彼の存在が共鳴していた。音数を絞ったミニマルで硬質ながら、フロアライクな要素以外に、反復と差異の妙があり、引き算の音響工作の美は変わらずある。また、過去からインスパイアを受けているアーティストの一人に、ベルナール・パルメジャーニ(Bernard Parmegiani)の名を挙げているのも然もありなんだろうか。2013年に惜しくも逝去したが、フランスの電子音楽、アコースマティック・ミュージックの作曲家として後進に多大な影響を与えている。そういった点も踏まえ、今作の過程とは原点回帰的でもないが、軸としてはこの『Ve Palor』は自身のアイデンティティの再確認作業だったのかもしれない。

例えば、オウテカやボーズ・オブ・カナダを聴いていると、電子音の粒や位相に耳が傾いでしまうような感覚をおぼえた人はいると思うが、彼の音もそういった訴求性を帯びている。タイトル・トラック「Ve Palor」のエレクトロニック・ファンクから、チップ・チューンの「Gniddt」、幽玄な「Deev」、モダン・インダストリアルな質感をもった「Foldt」など多彩な曲が入っているが、散漫な印象はおぼえず、全体に美意識が張り巡らされた力作になっている。

もう既に、ヒオール・クロニックとのアンビエント・アルバム、ポルヤ・ハタミとのコラボレーション作品は作り終えている。

次なる作品も気になってしまうが、彼はこういった興味深いことを述べている。

「今後の制作の焦点はサウンドデザインにある。最近では、グラニュラー・シンセサス・ツール(Granular Synthesis Tools)を試している。また、ヒオール・クロニック(注:Hior Chronik、ギリシャ出身の電子音楽家。)とともにアンビエント・アルバムを作り終えているし、ポルヤ・ハタミ(注:Porya Hatami、イランのアーティスト。エレクトロニカ、ミニマル・アンビエント、ドローンまで幅広い音楽性は評価が高い。)とのコラボレーションも。今は、その音楽をリリースするためのレーベルを探しているんだ。」

何とも実に、楽しみな作品がリリースされるのもそう遠くないことだろう。

更に、今の彼の音楽的な興味は、アコースマティック・ミュージックやフィールド・レコーディング作品へ向かっており、前述のパルメジャーニ以外に、ロバート・ハンプソン、共作をリリースするというポルヤ・ハタミもよく聴いているという。しかし、それでいて、モートン・フェルドマンの作品やジャズ、アブストラクト・エレクトロニック・ミュージックを聴くのも好きだという幅の広さも彼らしい。

日本に行けることは本当に楽しみにしてる。以前に、京都で古いお寺や竹林が集まった場所は印象深かったよ。

そんな彼がこのたび、実に約11年振りに来日公演を行なう運びとなった。しかも、Loscil、Ametsubという素晴らしいアクトとともに。無論、ずっと知っていた人も久しぶりの彼のライヴを楽しみにしているだろうが、後追いで知り、ここで初めて体験する人も多いとも察する。彼自身、この公演に特別な感慨があるようだ。

「日本での最後の来日は2003年、ずいぶん前だね、私は京都、名古屋、東京で公演をして、それはとても素晴らしい体験で、日本の人たちにライヴをできることはとても光栄なことだったよ。今、Loscilと一緒に行けることを本当に楽しみにしてる。」

そして、日本で行きたい場所、したいことについてもこう答えている。

「とても京都が好きで、以前に古いお寺や竹林が集まった場所は印象深かったよ。田舎のほうも行ってみたいんだけど、十分な時間がないしね。また、とてつもなく大きい都市もいいね、そう、東京は迷子になるくらい良い場所だよ。東京では新しい電子機器をチェックするために、電器店に行くつもりだよ。」

今回の公演は、『Ve Palor』に至るまでのクロニクル的なものになるのではないかという気もするものの、気難しく考えずとも、良いと思う。彼自身は、日本でのライヴはどのようなものになるかという問いに、複雑なビートとともに、沢山のエレクトロアコースティック・サウンドをやり、これぞ“Arovane”というサウンドも体感できるんじゃないかな、と返してくれたとおり、先入観なしにフラットに向き合えば、自然と惹き込まれるライヴをしてくれるだろう。

Text & Interview:Satoru Matsuura


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【来日公演情報】Loscil / Arovane Japan Tour 2014

2014/11/22(土)CIRCUS(OSAKA)
OPEN/START 22:00
[LIVE]
Loscil(Kranky)/ Arovane(n5MD)/ Ametsub (nothings66) / Eadonmm (Day Tripper Records/IdleMoments) + [VJ:Tatsuya Fujimoto]
[DJ] Lady Citizen(AN/AY)JOKEI.(SOLARIS/INCIDENT)

2014/11/24(月/祝)METRO(KYOTO)
OPEN/START 17:00
[LIVE] Loscil(Kranky)/ Arovane(n5MD)/ Ametsub (nothings66)
[DJ] Lady Citizen(AN/AY)/ Tatsuya Shimada (night cruising)

2014/11/26(水) at WWW(TOKYO)
OPEN/START 18:00
[LIVE]
Loscil(Kranky)/ Arovane(n5MD)/ Ametsub (nothings66)
[DJ]Daito Manabe(Rhizomatiks)


チケット情報はこちらから

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Arovane11年振りの来日公演によせて ―永遠の長さを知るサウンドデザイナー (PART1)

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ドイツのArovaneこと、Uwe Zahnが求めて続けてきた音像というのは、ジャーマン・ミニマルを巡るオルタナティヴな短史だったのかもしれない。80年代の終わりからのミュンヘンのS.A.M.との創作関係性、90年代以降のベルリン期のサウンド。彼のサウンド・テクスチュアとはあくまでミニマルでありながらも、ヒップホップのビートと〈Warp Records〉系のアーティストの一部にあるような幻惑/好戦性を行き来するドープな何かとの共振がむしろ、チャームでもあった。このたびは、2003年以来となる来日公演を前に、新たに行なった彼とのメール・インタビューでの言葉も含めて、改めて彼の来日を祝うべく、簡単ながら、来歴を追いたいと思う。

私はずっと音楽を作ることは辞めていない。でも、音楽ビジネスにおいて休息はいるんだ。

15、16歳から音を具体的に作り出し、構成などを考えはじめ、Kraftwerkの「Autobahn」がラジオから流れると、そのドップラー効果とシンセサイズされた車の音に魅了されたというのも彼らしくて、筆者も好きなエピソードの一つだ。

Aphex Twinの思わぬ13年振りの2014年の新作『Syro』が“彼そのものでしかなかった”ように、Arovaneの音にも普遍/不偏の響きがあった。比較対象とは精緻に違うが、例えば、UKのキエラン・ヘブデンことフォーテットが迅速に、都度のワークスで彩味を変え、進んでゆくのと比して、彼はあくまで寡黙にマイ・ペースに活動を進め、フロア以外でも愛される音を紡ぎ続けてきた。

04年の『Lilies』はたおやかながらも、クリック・ハウス色を持った曲もあり、アクチュアルにリッチー・ホウティン、もしくは別名義たるPlastikmanとのシンクする要素も当時、筆者としては伺えもした。美しいダウン・ビートの「Tokyo Ghost Story」という曲が入っていたなどもあり、日本でも特に認知度が高い作品のひとつだろう。また、〈Compost〉界隈のJazzanovaなどに備わっていた硬質なメロディアスな要素があったのも彼の存在性をより高めたといえる。しかし、『Lilies』では荘厳で物悲しさも見えたアンビエント曲「Good Bye Forever」が最後に収録されており、具体的な表明はなかったものの、Arovaneとしてのキャリアに幕引きをしたように思えた。

なお、「Good Bye Forever」という意味深いタイトルを含んだ曲には2013年の取材で振り返って、こういった言及をしている。

「永遠はどれくらいの長さなのだろう?確かに、私は長い間さよならを言ったし、旅行を楽しんだり、人には会ったり、時おりは演奏もしていた。この曲はセンチメンタルだと思う、でも、新しい始まりでもあったんだよ。」※1

音楽そのものへの情熱を決して失った訳ではなく、当時のことを彼は海外メディアのインタビューでは以下のように答えており、新たに行なったインタビューでもこうした言葉を残している。

「2003年から2004年の頃、私は音楽業界にうんざりしていた。だから、ビジネスから休みを置いて、完全に違う何かに打ち込んだ。スタジオ機器の一部を売却して、出力が大きく、軽量なモーターバイクを買ったんだ。それで南フランスにも旅行に行ったし、ドイツも旅したよ。」※2

「ええと、私はずっと音楽を作ることは辞めていないし、でも、音楽ビジネスにおいて休息はいるんだ。当時の判断は良かったと思っている。なぜなら、思考の整理ができたことで、音楽産業への姿勢が変化したから。今、ライヴのための何のプレッシャーもなく、サウンドデザインを固め、新しい音楽を書いている。今はサウンドデザイン部門のフリーランスとしてやっているのだけど、自身にとってそれは自然なことで、自分の音楽とサウンドデザインは元々、密接に結びついていたから。」

要は、自身にとって大切な音楽から一旦、距離を置く必要性があり、そこから再び音楽を作る活動に戻り、サウンドデザイナーとしての活躍する今へは断線はないということだ。

ここで、“サウンドデザイン”という言葉にピンと来ない人も居るかもしれないので、補足をしておくと、映画から派生した言葉で、ウォルター・マーチという音響技師がフランシス・フォード=コッポラの『地獄の黙示録』で音響を担当した際に名付けた由来がある。現在では音楽とは舞台、アートや多くのフィールドがクロスオーバーするのもあり、サウンドデザインというのもまさしく“音のデザイナー”として特定的な定義を越えてきている。※3


※1 astrangelyisolatedplaceより
http://astrangelyisolatedplace.com/2013/10/03/the-return-of-the-electronic-architect-an-interview-with-arovane/

※2 Headphone Commuteより
http://reviews.headphonecommute.com/2013/10/17/interview-with-arovane/

※3 サウンドデザインが作る新しい世界 森永康弘インタビュー CINRA NETより
http://store.cinra.net/static?content=interview-morinagayasuhiro1

なお、注釈のない彼の言は2014年10月に行なったメール・インタビュー内でのものです。

Text & Interview:Satoru Matsuura


Arovane11年振りの来日公演によせて ―永遠の長さを知るサウンドデザイナー(PART2)

【来日公演情報】Loscil / Arovane Japan Tour 2014

2014/11/22(土)CIRCUS(OSAKA)
OPEN/START 22:00
[LIVE]
Loscil(Kranky)/ Arovane(n5MD)/ Ametsub (nothings66) / Eadonmm (Day Tripper Records/IdleMoments) + [VJ:Tatsuya Fujimoto]
[DJ] Lady Citizen(AN/AY)JOKEI.(SOLARIS/INCIDENT)

2014/11/24(月/祝)METRO(KYOTO)
OPEN/START 17:00
[LIVE] Loscil(Kranky)/ Arovane(n5MD)/ Ametsub (nothings66)
[DJ] Lady Citizen(AN/AY)/ Tatsuya Shimada (night cruising)

2014/11/26(水) at WWW(TOKYO)
OPEN/START 18:00
[LIVE]
Loscil(Kranky)/ Arovane(n5MD)/ Ametsub (nothings66)
[DJ]Daito Manabe(Rhizomatiks)


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